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省令改正とガイドライン改定 今後は国交省との議論も必要

経産省、事例積み重ね見直しを検討

商慣行是正に向けた省令改正が7月2日に施行され、併せて「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針(取引適正化ガイドライン)」及び「液石法施行規則の運用及び解釈の基準」が改正しました。
今回施行となったのは、「過大な営業行為の制限」と「LPガス料金等の情報提供」についてです。これにより、LPガス事業者が、不動産・建設関係者等に対し、設備貸与や紹介料などの形で、過大な利益供与を行う等の行為が禁止されました。また、賃貸集合住宅の入居希望者に対し、LPガス料金等の情報を事前に提示することが求められます。
過大な営業行為について、LPガス業界では具体的な適用範囲と運用方法、線引き等の具体例の提示を要請していましたが、経済産業省は、あらかじめ網羅的に示すことは困難とし、通報フォームに寄せられた事例等を積み重ねて今後、見直しを図っていくとしました。

消費者庁によるLPガス消費者向け注意喚起ポスター

ブローカーに対する責任範囲も明記

取引適正化ガイドラインの改定では、省令改正のポイントである「過大な営業行為の制限」「LPガス料金等の情報提供」「三部料金制の徹底」について追記しています。
過大な営業行為の制限における「利益の供与」は、賃貸集合住宅等のオーナー等に対して、LPガス事業者を切替える条件として、設備の無償貸与、設備のフリーメンテナンス、消費者紹介にかかる謝礼金やLPガスボンベの設置スペースの賃借料の支払い等、様々な名目により利益供与を行うことなどが相当します。
さらに、LPガス事業者とブローカーの責任範囲についても明記されました。LPガス事業者との契約のもとで代理営業を行っている場合、その営業行為が問題となったときの責任はLPガス事業者自身が負うことになります。

ア)正常な商慣習を超えた利益供与の制限
② 消費者に対して値上げありきの安価なLPガス料金を提示すること

また、賃貸集合住宅等のオーナー等に対する継続的な利益供与(例えば、フリーメンテナンス契約、LPガスボンベ置き場の賃借料の支払い、LPガス料金の一部のキックバック、広告宣伝費の支払い等)であってそれが過大な場合は、LPガス事業者の切替えを長期にわたって阻害する効果を有し、消費者に対する高額で不透明なLPガス料金請求につながるおそれも高くなる点に留意する必要がある。
なお、LPガス事業者の切替え営業を代行する事業者等が、LPガス事業者との契約に基づき代理で営業を行っている場合において、当該代理事業者による営業行為が問題となったときは、その責任はLPガス事業者自身が負うこととなる。

出典:令和3年度 石油ガス流通販売経営実態調査 より

「LPガス事業者は、個々の営業行為について、他の事業分野の事例も参考にしつつ、正常な商慣習を超えた利益供与ではない、LPガス料金の低減に資する行為である等、対外的に根拠をもって説明でき、それが第三者から妥当であると評価されるようにしておく必要がある」としたうえで、「賃貸集合住宅等のオーナー等に対する利益供与行為が、事業者間の健全な競争を阻害し、消費者に不利益をもたらす可能性を鑑みれば、そうした利益行為については、過大なものかどうかにかかわらず、一切行わない方向で取り組んでいくことが望ましい」としたほか、LPガス事業者の変更を制限するような条件を付した契約等の締結の禁止(契約の解除を一切もしくは長期間許容しない期間や条件を設けること等)などにも言及しています。

三部料金制は早期見直しの要望も

一方、来年4月2日に施行予定の「三部料金制の徹底」では、エアコンやインターホン等、ガス消費とは関係ない設備費用をLPガス料金に計上してはならない(液石法施行規則第16条第15号の8)とし、設備費用の外出し表示・計上禁止が施行されます。賃貸集合住宅等においては、ガス消費に用いられる設備の費用であっても、当該費用をLPガス料金に計上してはならず(液石法施行規則第16条15号の9)、請求書への記載に当たっては、三部料金にしたうえで、設備料金を「該当なし(又は0円)」とする必要があります。賃貸集合住宅等において、オーナー等が、ガス配管(消費配管)、給湯器、エアコン等の設備を設置する場合、それらの費用は家賃として回収されるべきものとし、LPガス事業者は毅然とオーナー等に接するべきと、その姿勢に期待を寄せています。

賃貸集合住宅のオーナー(建物管理会社を含む)からの要求に応じて機器の負担をしたことがあるか

出典:令和3年度 石油ガス流通販売経営実態調査 より

出典:令和3年度 石油ガス流通販売経営実態調査 より

多くのLPガス事業者が二部制料金を採用するなか、三部料金制の徹底により今後、契約の見直しやシステム、14条書面の変更等が生じることになります。早期にオーナー等と既存契約のなかで投資した設備費用をどのように清算または回収するのか等を検討すべきと言えるでしょう。
経済産業省では、2025年4月2日時点で締結済みのLPガス販売契約については、設備費用の外出し表示が求められる一方で、設備費用の計上禁止に係る規律は適用されないが、消費者利益を確保する観点からは、新制度に対応した料金へと早期に見直していくことが望ましいとしています。

戸建住宅の具体的ルール作りも急務

今回の省令改正では主に賃貸集合住宅について議論され、戸建てについては「貸付配管」はよくない」という方向性は出されていますが、具体的なことは何も決まっていません。7月2日に省令改正が施行された後、切替えの主戦場を賃貸集合住宅から戸建にシフトした事業者も存在し、安値売込が激しさを増しており、早期に議論しルール作りを望む声も聞こえてきます。
しかし、長年続いてきた商慣行の是正は、LPガス事業者だけで解決できる問題ではありません。オーナー、不動産会社からの強要を是正するためには、所管する国土交通省も巻き込んだ議論が必要となりそうです。