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近年、生成AIが幅広い分野で急速に浸透し、文書生成から感情分析まで、AI技術の活用により効率的な業務運営を目指す企業が増えています。身近に積極的に触れながら、その可能性を最大限に活かす応用方法について、AIやIoTなどの最新技術を駆使しDXを推進するコンサルタントで、メディアスケッチ株式会社の代表を務める伊本貴士氏に話を聞きました。
2024年7月16日
生成AIの進化は凄まじく、その実用性が日々高まっています。過去には、AIといえば科学技術の限られた領域での研究対象でしたが、現在では私たちの日常生活やビジネスの現場でも広く利用されるようになりました。
特に革命的であったのは、2020年頃に登場した生成AIです。AIはビッグデータから法則やパターンを発見するものですが、生成AIは世界中の文書から単語の関連性や配置パターンを解析し、質問に対する回答として新しい文書を作成する文書生成AIです。
代表的な文書生成AIサービスのChatGPTの精度は人間が書く文書に遜色のないレベルに到達し、そのため活用することで難しいプログラミングやシステム構築をせずに、飛躍的な業務効率向上が期待できると注目されています。
生成AIは単に質問に回答するだけでなく、アイデア出し、文章の専門性評価、感情分析も可能です。この文書が怒っているかどうかを生成AIに聞くと「この文書は怒っていると思われます」といったように回答してくれます。これは、文書の様々なカテゴリ分けやラベル付けを自動化してくれるでしょう。
画像や音声の解析と文書化、OCR(光学文字認識)など、幅広い用途に対応しています。これは生成AIが文書だけではなく、画像や音声など様々なマルチメディアコンテンツと単語を結びつけるマルチモーダルAIとして進化しているからです。
マルチモーダルなAIは、例えば会議音声を文書化するに留まらず、その内容を分析し参加者毎にタスクをまとめるなどの高度な事務作業を自動化する事ができます。また、OCR機能を活用すれば発注書や注文書を自動でデータ化する事も可能です。精度に関してですが、実際にChatGPTで試してみると、まだ手書き文字に関しての精度は発展途上ですが、電光掲示板などの崩れていないフォントの文字はほとんど間違いなく認識できるレベルまで進化しました。
生成AIの導入を考える際には、まず事務処理の軽減から始めることをお勧めします。例えば、定型的な文書の作成やデータ入力、スケジュール管理など、日常的な事務作業をAIに任せることで、業務の効率が大幅に向上します。これにより、従業員はより創造的で価値の高い業務に集中することができるようになります。
例えば、最も注目をあつめているOpenAIのChatGPTは2024年にGPT-4oという最新のエンジンをリリースしましたが、文書生成はもちろん、画像認識やデータ分析も可能で高度なマルチモーダルAIとして進化しています。
他にも精度の高いAIとしては、GoogleのGemini、Anthropicが提供するClaudeが世界的に人気となっており、ChatGPTを含めた3つのサービスが精度において非常に熾烈な争いをしています。
小さな改善をせずに、いきなり大きな成果を求める企業もありますが、いきなり大きな成果を求めようとすると成功体験がなくモチベーションが下がり失敗します。
また、小さな改善でも積み上げると大きな改善に繋がります。まずは、小さな成功体験を積み上げながら、社員を教育し組織全体の生成AIに対するリテラシーを上げていく事が重要と言えます。
事務処理の軽減に慣れてきたら、次のステップとしてシステムと生成AIを連携させ、業務プロセスの革新を図ることが重要です。例えば、顧客管理システム(CRM)や企業資源計画(ERP)と生成AIを連携させることで、データの自動分析や予測、意思決定支援が可能になります。これにより、業務プロセスがより効率化され、迅速な対応が求められるビジネス環境において競争力を維持することができます。
AIを使ったデータ分析は、企業の意思決定をサポートし、より正確な予測を立てる助けとなります。例えば、販売データを解析し、将来のトレンドを予測することで、在庫管理を最適化することが可能です。また、顧客の購買履歴を分析し、個別のニーズに応じたマーケティング施策を展開 することもできます。
1.カスタマーサポート
2.マーケティング
3.人事・採用
4.IT
5.データ解析
6.法務
7.教育・トレーニング
生成AIを導入する際には、個人情報や機密情報の取り扱いに関するルール作りが不可欠です。AIに入力するデータには十分な注意が必要であり、誤って機密情報が外部に流出しないようにするための対策が求められます。また、定期的にセキュリティチェックを行い、リスクを最小限に抑える努力が必要です。
さらに、従業員に対する教育も重要です。生成AIの利用に関するガイドラインを作成し、全従業員に周知徹底することで、誤った使い方を防ぐことができます。例えば、個人情報を含むデータをAIに入力する際の注意点や、AIが生成した内容をそのまま使用せずに必ず確認する手順などを明確にしておくことが求められます。
結論として、生成AIを導入する際には、まず事務処理の軽減から始め、リスクの低い部分から活用を進めることが大切です。そして、ポリシー作りを行いながら、生成AIの使い方に慣れていくことが重要です。これにより、最適な利用方法を模索し、業務効率化やプロセスの革新に繋げていくことができます。
生成AIは、正しく活用すれば、ビジネスの競争力を大幅に向上させる強力なツールとなるでしょう。初めは小さなステップから始め、徐々に活用範囲を広げていくことで、企業全体の効率化と革新を実現することができます。ポリシー作りとリスク管理を徹底しながら、生成AIを積極的に活用していきましょう。
メディアスケッチ株式会社 代表取締役
私立サイバー大学 准教授
NECソフト株式会社、フューチャーアーキテクト株式会社を経てメディアスケッチ株式会社を設立。AIやIoTなどの最新技術を駆使しDXを推進するコンサルタントとして各企業と共同研究開発を通し、様々なAI分析器やIoTデバイスの開発を行う。自らのノウハウを社会に広めるために、日経ビジネススクール講師や私立サイバー大学准教授として講師活動を行う。また、ふくい産業支援センターのDX戦略アドバイザーなど、自治体のアドバイザーとして地方の中小企業DX支援活動などにも参加。フジテレビ『ホンマでっか!?TV』やテレビ朝日『サンデーLive!!』など、最新技術を紹介するタレントとしてメディア出演多数。