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4⽉2⽇、経産省が改正省令を公布
取引適正化ガイドラインは施⾏前に公表の予定

「過大な営業行為の制限」「LPガス料金等の情報提供」は7月施行へ

経済産業省は、LPガスの商慣⾏是正に向け「液化⽯油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施⾏規則の⼀部を改正する省令」を4⽉2⽇に公布しました。同省令は、法第16条第2項の規定に基づく「販売の⽅法の基準」として、LPガスの商慣⾏を是正するための新たな規律を設けるものです。ポイントは、「過⼤な営業⾏為の制限」「三部料⾦制の徹底」「LPガス料⾦等の情報提供」の3つとなっています。「過⼤な営業⾏為の制限」、「LPガス料⾦等の情報提供」については、7⽉2⽇に施⾏。⼀⽅、「三部料⾦制の徹底」は1年間の猶予措置を設け2025年4⽉2⽇の施⾏を予定しています。

経済産業省は、改正省令に係る詳細を規程する「取引適正化ガイドライン」の改正案を5月25日に提⽰しました。取引適正化ガイドラインは、エネルギー間の競争が激化するなか、LPガスが今後もお客様から選択されるエネルギーとなることを目的としてLPガス事業者が取り組むべき事項をまとめたものであり、平成29年に制定されました。今回の改正省令を踏まえ、問題となる行為や望ましい行為の具体例や考え方を盛り込んだ内容への改訂が予定されています。提示されたガイドライン案では、「過⼤な営業⾏為の制限」においてどのような⾏為等が液⽯法等との関係で問題となるかについて、「取引の内容や影響など、様々な要素を総合的に勘案し、個別に判断することが求められ、網羅的に⽰すことは困難。今後、判断の積み重ねが取引適正化ガイドラインの内容をより⼀層明確にしていく」としています。

また、「利益供与」は「物品サービスの提供」「⾦銭的な利益の提供」と整理しています。例えば「利益の供与」には、①設備の無償貸与や安値提供、フリーメンテナンスサービス等の物品‧サービスの提供②紹介料等の名⽬による切替え⼿数料の⽀払い、回収代⾏⼿数料等の名⽬によるLPガス料⾦の⼀部のキックバック、LPガスボンベ置き場の賃借料や広告宣伝費等の名⽬による⾦銭的な利益の提供等が含まれるとしています。また、「⼀般消費者等がLPガス事業者を選択しやすい環境を整備する」時に問題となる⾏為等について設備貸与契約などで、①契約の解除⼀切、若しくは、⻑期間許容しない条件②⾼額な違約⾦規程や貸与設備等の買取や返⾦条項③更新を拒否できる期間をきわめて短い期間とする―こと等をあげています。

物品サービスの提供

  • 設備の無償貸与や安値提供
  • フリーメンテナンスサービス等の物品、サービスの提供

⾦銭的な利益の提供

  • 紹介料等の名⽬による切替え⼿数料の⽀払い
  • 回収代⾏⼿数料等の名⽬によるLPガス料⾦の⼀部キックバック
  • LPガスボンベ置き場の賃借料や広告宣伝費等の名⽬による⾦銭的な利益の提供等

「利益の供与」に含まれる⾏為

「三部料⾦の徹底」設備費⽤の外出し表⽰、計上禁⽌

来年4⽉2⽇に施⾏予定の「三部料⾦の徹底」に関しては、「設備費⽤の外出し表⽰、計上禁⽌」とし、⼀般消費者等に対してLPガス料⾦を請求する時、基本料⾦、従量料⾦、設備料⾦からなる三部料⾦に整理したうえで、算定根拠を通知しなければならないこと。また、エアコン・インターフォン等ガス消費機器と関係ない設備費⽤を料⾦に計上してはならない。賃貸集合住宅の三部料⾦制では、設備料⾦を「該当なし」または「0円」とする必要があるとしています。

LPガス販売事業者は設備費⽤が含まれていないことを客観的根拠により説明できるようにすることとし、特に賃貸集合住宅のガス料⾦で費⽤回収していないことを説明できることを求めています。なお、既存契約は25年4⽉2⽇施⾏⽇には適⽤されないが新制度に対応した料⾦へ早期に⾒直していくことが望ましいとしています。例えば、「⾃動更新条項」について、更新期⽇以降の契約は「新規」扱いとなり、過⼤な営業⾏為の制限に係る規律の対象となることや、「既存のLPガス販売契約であれば、施⾏⽇以降も設備料⾦を外出し表⽰」については、既存契約であれ新規契約であれ、施⾏⽇以降は設備料⾦の外出し表⽰は必須。その上で、無償貸与に要した費⽤(設備費⽤)がLPガス料⾦に含まれていない(該当なし、0円)とする場合、客観的な根拠により説明可能としておく必要があるなど―具体的に⽰すとしています。
なお、経済産業省では、取引適正化ガイドラインとは別に具体的な事例をQ&A集として整理する⽅針のようです。

経済産業省が期待「⾃主取組宣⾔」

LPガス業界による⾃主的取組として経済産業省が期待するのが「商慣⾏⾒直しに向けた⾃主取組宣⾔」です。公布から⼀部の事業者が宣⾔を⾃社HPに掲載するなど、企業としての姿勢を明らかにするなか、「悪質な事業者を警戒すべきでは」の声もあり、宣⾔する事業者はあまり増えていない状況です。

伊藤忠エネクスホームライフグループ各社も⾃主取組み宣⾔を公開している

各社の宣⾔をみると、今回の省令改正のポイントである①過⼤な営業⾏為の制限②三部料⾦制の徹底③LPガス料⾦等の情報提供―について、法令順守を徹底するとの内容となっています。経済産業省は「フォーマット化すると形骸化する。各事業者が事業規模や組織体制、ビジネスモデルの在り⽅を踏まえ、創意⼯夫を凝らしながら対外説明等に取組んでいくことが適切」と宣⾔の考えを⽰しています。
改正法令施⾏を前に、駆け込み的な営業⾏為が増え、「不動産業者から今のうちと⾔われた」と給湯器等の交換をもちかける不動産管理会社、オーナーも多いといいます。昨年12⽉に経済産業省が開設した通報フォームには5⽉10⽇時点で約670件の情報が寄せられており、現場では露⾻な利益供与を避けながら、実質的な利益供与は継続中だと経済産業省もみているようです。

情報提供のあった営業・要求行為の事例

出典:第9回 液化石油ガス流通ワーキンググループ事務局提出資料

  1. LPガス事業者がLPガス供給の切り替え営業を⾏っており、ガス機器、エアコン、Wi-Fi設備及び防犯カメラ等の無償での設置、紹介料の⽀払いを提案している。
    制度改正については「4⽉までに契約を結べば 既存の契約については問題ない」と説明している

  2. LPガス事業者が、不動産管理会社に対して、ボンベ設置場所の⼟地代、LPガス料⾦からのキックバックなど形を変えて、今までどおり、紹介料相当の⾦額を⽀払うという営業を⾏っている。

第9回液化石油ガス流通WGで経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部の定光裕樹部長は、駆け込み的な営業行為、過大な営業行為などについて、「通報フォームに寄せられた情報について、ヒアリングを踏まえて経済産業省の指摘に対して是正されない場合は、改正省令施行前であっても行政処分等や社名の公表を含めた措置もとる」と会議の席上話しています。