誠の相場観

2022年3月28日

誠の相場観 最終回

脱炭素の前に脱ロシア。原油200㌦・300㌦の囁きとレーショニング発生の危機

  米・EUはエネルギー協力の拡大を合意。米国産LNGの供給拡大を柱にEUのロシアへのエネルギー依存度を引き下げ、米欧協力してロシア経済に圧力を掛ける狙い。

「脱ロシア」が具体的な形で急速に進展。ドイツも今夏迄にロシア産石油の依存半減に動き、年内には依存度をほぼゼロと目標を掲げた。

IEA(国際エネルギー機関)も日米欧など加盟国31か国の閣僚による理事会でエネルギー源と供給手段の多様化を謳った共同声明をまとめた。

LNGの供給網強化を課題としている。また現在IEAの枠組みでの追加備蓄放出の議論も進展中。

  進む脱ロシアの裏で、イエメンの新イラン武装組織フーシ派によるサウジアラビア国営石油のサウジアラムコへの石油関連施設への攻撃が次第に激化。

25日には貯蔵タンク2つで火災が発生。

これについてはUAEも攻撃対象であり、フーシ派による更なる大きな攻撃により、「具体的な供給障害の発生」は時間の問題かもしれない。

サウジ石油相も声明で、「供給不足が発生してもサウジに責任はない」としている。

  停戦協議の進展には合わせ、原油の一時100㌦まで低下も、上述の動き背景に再び反騰続伸、現在WTI原油:113㌦、Brent原油:120㌦近辺を漂う。

原油急騰の中で、コロナ影響により落ち込んでいた米シェール生産は急ピッチで日量100万バレル水準の増産を進めているが、サプラインチェーン混乱や、ここ2年で多くのシェール労働者が離職したため、人手不足の影響もあり、原油価格上昇=スムースなシェール生産増とはならず足踏みしている状況。

  ロシア侵攻により市場から消失したと推計される日量400万バレルのロシア産原油からの離脱は単なる生産量のみならず、消費国までの輸送までを踏まえると、やはり決して容易ではない。

その影響はただのエネルギー高騰でなく、世界的なリセッション(景気後退)は不可避との見通しが多く出てきだした。

  米ダラス連銀のエコノミストはロシアからの供給不足が解決しない限り、原油の需要超過が解消されるまで大幅な値上がりや長期的な高止まりは必然となり、特に欧州で天然ガスやその他商品の価格上昇による景気低迷は1991年の世界リセッションより長引く可能性が高いと指摘。

  脱ロシアの影響に対して、ロシアのノバク副首相は「西側諸国によるロシア産原油を拒否する場合は300㌦まで原油上昇する可能性」を指摘。

「但し現実的に可能性は低い」とも述べている。

また米投資会社でも同様にロシアからの供給不足を補うことは困難であり、年末までの200㌦に達する軌道の想定を示した。

  遂に200㌦・300㌦という価格が囁かれ始めた。

そしてその原油価格上昇の上限を意味するものとして、レーショニング発生を指摘。

レーショニングとは、あるものの価格高騰により、消費者側が値段が高いために需要が減退することを意味し、そのラインが200㌦(300㌦)となれば需要は減退し、いわゆるロシアからの供給不足との需給調整が図られるとの見方である。

    

  石油・ガス・電力と既に国内でもレーショニングは発生しているのかもしれない。

資源のない日本においては、このエネルギー高騰長期化は消費の節約・減退を急速化させる要因となり、延いては国内エネルギーの安定供給網にも影響が出てこよう。

我々、生活に欠かせないエネルギー供給者として脱炭素社会への取組みと共に、強靭な安定供給体制構築を更に推し進め、この大きな変化の波を乗り越えていかねばならない。

  さて私事で恐縮ですが4/1付人事異動を拝命し、本稿タイトル通り、今回が「誠の相場観」の最終回となります。

LPGの価格構成要素であるCPが原油価格と非常に緊密に連動する特性から主に原油価格変動を中心に、その変動の背景や今後の短・中長期予測など、短い間ではございましたが、不定期ながら好き勝手書かせて頂いたこの「誠の相場観」をご拝読賜りまして、本当に有難うございました。