誠の相場観

2021年12月23日

誠の相場観vol.6

第6回 2022年のマーケット展望

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  11月末に発生した得体の知れない新型変異株「オミクロン株」については、その感染力や重症化リスクに関する情報の消化と共に、一時70㌦割れまで大きく売られた原油価格は時間の経過とともに次第に値位置を回復し、Brent原油で現在75㌦近辺の小康状態となっている。

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オミクロン株については現情報では重症化リスクは低いものの、感染力がかなり強く、人々の行動制限や一部欧州ではロックダウン導入まで影響が出ている。

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また米国を始めとする消費国からのSPR(戦略石油備蓄)の放出による価格抑制策や、IEAによる来期供給過多見通し等、複合的要因で上値追随は重く80㌦台回復には依然として程遠い状況。

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一方では1月も予定通りの段階的増産措置を決定したOPEC+だが、サウジ・イラクの石油相らから75㌦以下では減産を匂わす発言も出ており下値は固まりつつある。

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  そんな最中、欧州ガス価格は史上最高値更新の急騰劇となっている。

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12/21の欧州天然ガス(LNG)取引価格は59.84㌦/100万BTU(英国熱量単位)となり、これは原油等価換算でみると、1バレル当たり「360㌦」相当。

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原油価格の5倍という異常値となっています。

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オミクロン株発生時に原油が10ドル棒下げとの時も、唯一全く下がらなかった資源価格でした。

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欧州は年初からの低在庫、発電用の堅調な需要による需給タイト化が継続。

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そんな中追加供給確保が命題でしたが、中国政府も同様にエネルギー資源爆買い、米国からの追加供給不足、またロシア/パイプラインから政治的な側面により十分な供給を確保出来なかった模様で、足元もロシアとウクライナの軍事的緊張の高まりもあり、継続的なガス供給への懸念も高まったことが要因。

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  この影響はアジアである日本にも影響がない訳ではない。

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日本のLNG調達は長期契約による安定的なコストでの調達が一般的だが、電力需要の高まりにより追加調達が必要なな場合、追加プレミアムを払ってこの超高価なLNGを調達せねばならず、現在の電力卸市場の価格を見るに、電力市場には当面大きな影響がもたらされる状況。

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こういった状況は、寧ろ「LNGの代替」需要として、需要面から原油の潜在的な買いが強まっている。

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  さて2022年の原油相場。投資銀行のゴールドマンサックス(GS)などはかなり強気。

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2022年、2023年の石油需要が過去最高の見通しを示し、2023年にかけてBrent原油は85㌦水準、「100㌦もあり得る」と発表。EIA(米国エネルギー情報局)や供給過多を予見するIEA(国際エネルギー機関)は弱気見通しの70㌦台前半水準と見通しを示している。

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  原油価格の回復と共に、普通にシェールなど増産が進めば需給は緩和。

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一方では脱炭素潮流による化石燃料への投資が全然足らなければ、将来の暴騰リスクの高まりにより先物価格は上昇。

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現在のオミクロンの消化はあっても、よもやよもやの「新たな変異株の出現リスク」。この辺のバランス感。以下は直近の米国原油在庫。

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  上図から足元は、過去5年平均の在庫水準を完全に割り超低在庫状況です。

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来週あたりからは米国SPR放出も加わり若干上向くと思いますが、それでも低在庫が解消される状況ではありません。

次は米国シェールオイル企業の動向(12/15付)。

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下記図をみれば(青色)キャッシュフローは大きく改善。でも(茶色)投資は増えていません。

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これは米政府のグリーン政策の影響大きく、将来の原油生産に不安を抱きます。

  次に中東情勢。

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サウジのアブドルアジズアジズ(エネルギー石油)相は、このまま世界的に石油開発の投資不足が続けば、2030年までに日量3,000万バレルの生産が喪失されると警告。

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サウジは生産能力を増やし、OPECシェアは拡大すると発言。

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また気になるイラン核合意協議。

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これは決裂状態で、寧ろ協議がこのまま終了する可能性が高まっており、禁輸措置されているイランの石油市場復帰は遠のいている。

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またロシア・ウクライナ緊迫情勢も忘れてはならない側面である。

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  斯様な状況を鑑みると、生産面では米国のシェール回復は見られるが新たな投資はなく、イラン復帰も遠のいており、次第に協調減産により原油価格コントロール力を強めるOPEC+のシェアが拡大することは、OPEC+が投資に必要な最低水準である75㌦は強く意識される水準となる。

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需要面からは、やはりオミクロン含めたコロナからの回復もあるが、脱炭素潮流により石炭・LNG等の代替需要としての潜在的な買い側面が継続しそうなこと。

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このバランス感からは、順当であれば足元水準をボトムに次第に値位置を切り上げていく2022年となると思います。

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弱気要因となるのは「新たな変異株やコロナ感染拡大」と「米国を始めとする消費国連合による価格抑制策」。

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100㌦までは不透明ながら、完全に値位置を切り上げ90㌦水準を目指すとせば、来季秋口から冬場にかけた各国による資源確保が起点となるであろう。

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  さて2021年ももうすぐ終わり。

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毎年のことながらあっという間に1年が過ぎていく。

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ただ年齢の経過とともに年の瀬を感じなくなってきたところ、今年も2年連続のコロナ禍による年末らしいイベントがないのもそう感じる要因の一つか、早く正常化となるように祈念し、皆様もどうかよいお年をお迎えください。来年も宜しくお願い申し上げます。