誠の相場観

2021年11月29日

誠の相場観vol.5

第5回 得体の知れないものへの恐怖

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  先週末NYダウは▲905㌦の今年最大の下げ幅を記録。

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偏に南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異型が見つかったことが起因。

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この変異株は「オミクロン」と命名された。

新型コロナの感染拡大ニュースに多大な影響を受ける原油相場も10㌦超の棒下げ。

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今回は通常の感染拡大ではなく、新たに「得体の知れない変異株の出現」とその感染拡大が市場を恐怖で覆った。

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これから次第に明らかになろうが11月中旬頃の欧州で警戒された感染拡大は、実はこのオミクロン株と同じで既に拡散していたことになると、現在のワクチン効果も疑問視され、更なる恐怖が市場を覆うことになろう。

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  ここ数日前までは米バイデン大統領によるガソリン価格高騰の抑制策として、市場の想定通りのSPR(Strategic Petroleum Reserve:戦略石油備蓄)の放出が決定された。

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ご認識の通りその放出量による影響は「限定的」なものであり、抑制策を警戒しBrent原油で78㌦近辺まで弱含んでいたマーケットはそのニュースの発表後に、材料出尽くし感により逆に急騰。

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83㌦近辺まで回復。

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米バイデン大統領にはただの中間選挙に向けた政治的パフォーマンスとなり兼ねない、言わば投資格言の一つ「知ったらしまい」という結果。

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  OPEC+による「協調減産」という産油国歳入にとり期待すべき原油価格レンジ(サウジアラビアなら75㌦~85㌦)をコントロール出来る様、世界的原油需要増減に応じた「供給管理機能」の生産体制の枠組み下の前では、一時的な需給緩和策等では影響力も限定的となりやすい。

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前回報でも述べた様に、産油国と消費国各々が見ている景色が違く、来期より需給緩和を予期し、米国を始めとする消費国からの要請を一蹴し、増産に慎重な姿勢を見せるOPEC+にとっては、例え限定的なSPRの放出を以てしても、その分減産調整すれば 良いとの考え・姿勢であること。

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  但し今回のSPR放出決定に見た原油価格抑制策についてのサプライズは、一つは本来のSPRの意義である有事の際でなく価格抑制策の為に使用されること、次に米国単独でなく主要消費国である日本・インド・韓国・英国及び対立している中国をも巻き込み協調するという2点であり、これら協調した国々の原油消費量は世界全体の約50%に達する規模で、OPEC+という産油国連合に応対する、「消費国連合が誕生」したとも言え、中長期的には大きな影響力を及ぼす可能性があることは留意しておきたい。

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  今後の原油相場見通しとしては、この「得体の知れないオミクロン変異株の出現」によって1日にしてガラリと変貌。

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まずは12月2日のOPEC+会合による今後の生産政策についいて。

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OPECはこの消費国連合によるSPR放出を受け、今後数か月の供給過剰の「拡大」に言及し、12月に日量40万バレル、来年1月に日量230万バレルの供給過剰を予想。

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この12月2日の会合で現在の「段階的な増産」の停止を検討・発表する可能性あり。

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  消費国連合による価格抑制策に対し、見通し(景色)の違いで即座に増産停止するのは世界的な消費国からの非難を浴びる可能性もあったが、このオミクロン株の出現による現在の各国の渡航制限・水際対策の強化の動きを見れば、増産停止→減産幅拡大に向けた大義名分が与えられた格好ともいえる。

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  足元米国のテーパリング加速による早期利上げ観測が高まり、世界的に株価の地合いが悪い最中、消費国連合による価格抑制策に、決定打としてこのオミクロン株の出現に、市場はパニック的に株価も資源価格もリスクオフ(手仕舞い)の暴落の様相。

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今後日を追うごとにオミクロン株の実態が公表されるにつれ、一喜一憂の変動の激しい展開が続く。

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  原油市場については12/2のOPEC+会合による協調減産政策如何をベースとなるが、現状政策維持(段階的増産)のままなら、原油は一段安の展開を想定。

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逆に減産幅拡大に向かえば、その減産規模によるものの下げ止まり効果は出てこよう。

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一方でこのオミクロン株の実態が明らかになるにつれ、その感染力の強さや現在のワクチン効果がなく、新たにワクチン開発、またその開発期間によって原油下落圧力は強まり易い。

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逆にオミクロン株の影響が限定的なものと判れば、急反発の可能性も否めない。

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  今後はこのオミクロンの実態ニュースを日々消化していく中で、非常にボラティリティのの高い価格変動の激しい展開が当面継続する見通し。

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OPEC+の供給管理機能が活きている中では下値は60㌦水準とみるが、上値は直近の80㌦水準が精一杯であろう。

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オミクロン出現とその悪影響により世界的な経済回復基調から景気後退(リセッション)へと様変わりになれば、80㌦超えからの一本調子での上昇が考え辛い。

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またこの不透明な状況ではLPガス(CP)も原油連動の動きとなり下落圧力は避けられない。

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  ともあれ一個人として、まずこのオミクロン株の感染拡大に各国政府には楽観視なく水際対策を徹底強化してもらいたい。

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日本国内における感染者数が減少傾向の中、受験生を持つ親としては少し安堵感を抱いていたところ、このオミクロン株の出現に我が家も一喜一憂の変動の激しい展開が続きそうである...。

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