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自宅の一部を賃貸物件に活用
ライフスタイルの変化にともなって近年注目を集めている賃貸併用住宅。自宅と賃貸住宅を兼ねた建物のことをいいます。家賃収入を得ることができ、将来的には二世帯住宅とすることも可能です。特に生活の利便性や、賃貸住宅のニーズが高い地域にお住まいのオーナーにとっては、有効活用の選択肢の一つとなります。こうした住宅の特長や活用のメリット、留意すべき点などをまとめました。
2025年1月30日
賃貸併用住宅は、自分が住む部屋と第三者に貸す部屋がある建物です。居住するオーナーはどのような住まい方を実現し、賃貸居住者との関係を構築しているのでしょうか。
賃貸併用住宅を仕様化して約 40 年になる大手ハウスメーカーがオーナーに行った調査によると、賃貸併用住宅には新たなメリットが見えてきたといいます。それは、次のような新たな「くらし価値」です。
この調査では、築年数が経過すると、オーナーの家族人数は減少する傾向にありました。また、約 40%が賃貸併用住宅の計画時に家族や親族が住むことを想定しており、家族用住戸を賃貸に転用しやすい設計にしておくなどの例が見られました。
賃貸併用住宅のメリット1
大きなメリットは、家賃収入で自宅のローン返済ができること。賃貸併用住宅は、「建築面積のうち、住居部分が50%以上であること(=賃貸部分が 49%以下であること)」などの要件を満たせば、住宅ローンを借り入れできる場合があります。
一般的なアパートローンと比較して、住宅ローンは金利が低く、返済期間が長く設定されています。また、住宅ローンなら借り入れから 10 年間、毎年の借入残高の1%が控除される住宅ローン控除の適用を受けることもできます。
ただし、借り主の収入が低いと、住宅ローンを組むことができない場合もあります。アパートと比較すると、賃貸併用住宅は収益性がないとされるためです。
金利や審査基準などは都市銀行や地方銀行、ネット銀行など、金融機関によって異なるので、慎重な検討が必要です。
賃貸併用住宅のメリット2
住まいを取得すると納付が必要となるのが固定資産税です。毎年1月1日現在の土地・建物の所有者に課されるものですが、自宅や賃貸住宅の敷地に対しては課税評価が軽減される特例があります。
賃貸併用住宅は「自宅」とみなされます。特例では、「1世帯あたり 200㎡までの敷地は小規模住宅用地として、その評価額の1/6を課税標準とする」とされています。
また、200㎡を超える部分は1/3に軽減されます。
賃貸併用住宅のメリット3
相続税の評価では、賃貸は低い評価が受けられます。
「小規模宅地等の特例」では、居住していた自宅の土地を配偶者や同居している子どもが相続する場合、敷地面積 330㎡までは 80%の評価減を受けられます。
ただし、賃貸併用住宅の場合、賃貸部分(貸付事業用宅地等)とみなされた敷地については、特定居住用宅地等より評価減幅は少ないものの貸付事業用宅地等の減額割合が適用され、50%の評価減となります。つまり、賃貸併用住宅なら親と同居していない場合であっても、賃貸部分に関して相続税の節税メリットが期待できます。
魅力的な点が多い賃貸併用住宅ですが、建築費用が一般住宅よりかなり割高になるほか、次のような注意点もありますので、万全な対応策を講じておくことが重要です。明確な収支計画をたて、賃貸住宅のオーナーとして慎重に取り組みましょう。
自宅と賃貸部分の玄関の位置を変えることで動線を分けます。目隠しとなるような植栽や塀を活用するなど工夫しましょう。また、オーナー自身がトラブルの当事者になる可能性があることを自覚しておく必要もあります。
入居者やオーナーに子供がいる場合、騒音が問題になりがちです。子供がいなくても、生活時間の違いから互いの音が気になってしまうことも。壁や床の遮音性能を高める、水回りの下に寝室を置かないなどの配慮が必要です。
「自宅部分が 50%以上」という制約はアパート部分の広さ・狭さとも連動しており、どちらかを犠牲にせざるを得ない場合があります。どのような建物にしていくか、建築士やハウスメーカー等と慎重に相談して進めましょう。
駅から遠いなど、あまり賃貸に向かない土地だと入居者が集まりません。単身者とファミリーでも利便性は異なります。周辺の賃貸動向を把握して間取りや設備、仕様を検討します。入居者とオーナー双方が住みやすい環境づくりをめざしましょう。
賃貸の戸数が少ないからと自主管理を選ぶと、意外と大変なことに気づくかもしれません。入居者との距離が近いので問い合わせやクレームには早急かつていねいに対応したいものですが、それが難しいのであれば、管理会社に委託するのも一つの方法です。
融資の条件として、家賃保証型サブリースが前提となることがあります。空室が発生しても所有者へはサブリース会社から賃料が固定で払われますが、手数料が発生するなど、収益性は下がります。事前に金融機関の融資条件を確認しておきましょう。
経営成功のためのポイント 1
集合賃貸物件と同様に賃貸併用住宅でも立地条件は重要です。検討する土地が住宅地にある、コンビニやスーパー、病院などが近い、交通の便がよいなどの条件に合致していれば、入居希望者が集まりやすくなります。また、オーナーと入居者で別の出入り口を確保する必要もあります。賃貸物件専用の駐車場があればさらに有利になります。
間取りは、入居率に大きく影響します。代表的な間取りの利点と難点を紹介します。
経営成功のためのポイント 2
入居者との良好な関係が築ければ、長期の入居が期待できますし、防犯の面での安心感もあるでしょう。訪問したり立ち話をしたりするなど、入居者と顔を合わせる機会が多ければお互いの生活パターンがわかり、騒音がそれほど気にならないという実例もあるようです。
もちろん家族が住む場合もフレキシブルな対応が可能です。
賃貸併用住宅は一般住宅より建築費用が嵩むという大きなハードルがありますが、興味をもった方は、賃貸併用住宅についてのノウハウや施工実績が充実しているハウスメーカーや設計会社などを選定し、まずは相談してみましょう。
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○くらしイノベーション研究所調査報告
「賃貸併用住宅の価値~オーナー調査から見えた新たなメリット」(旭化成ホームズ、2022 年)
○2K-ONLINE
https://2k-online.jp/chintaiheiyou
○ HOME4Uオーナーズ
https://home4u-owners.jp/contents/construction-31-1596
○スマイティ不動産住宅情報サイト
https://sumaity.com/land_usage/press/229/